静かに降る雨の中―――少女は、首に掛けられた丸いリングの石を人差し指でそっとなぞった。あまり高価とは言えないリングの裏には、大切な人の名前が刻まれている。
たいせつな……大切な…人。
静かに降る雨の中。蒼い石は雨の雫を反射し、淡く光を放つ。
永遠とも思える時間の中。雨は少女の体温を奪う。
吐く息は白く天へ、天へと上がっていき、やがて消えていく…
視界が霞んでよく見えない。そして、ひどく…寒い。
ぼんやりと目の前にうつる、四角い石作りの墓石。
小さな白い花が供えられている墓石には、没年と大切なあの人の名前が刻まれている。
―――同じだね。って、そう言ってあの人は笑ったの。
「君の蒼と僕の青は同じだね。」そう言って笑ったの…
些細な一言だったかもしれない。それでも、あの時の事。私は今でも覚えている。
記憶の奥に刻まれたこの想いは、きっと永遠に消える事なく続いてる。
私が消えてしまっても、
貴方が生きている限り。貴方の中で私とあの人の想いは生き続ける。繋がっている。
泣かないで。
ね?だから……わすれないで…・・・・・・
―――愛している。私のたった一人の最愛。
遠くを見つめていた少女が、思い出したかのようにリングに指を添えた。
決して忘れないようにと、決意したかのように、ずっと、ずっと…少女はそこに居た。

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