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The place to which it returns~帰る場所~

つらつらとFF5バツレナ自己満足小説を書いております。 その他小ネタやら何やら増えるかもしれません…

   

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想い重なる時

泣きながら笑うと言う、そんな意味不明なシチュエーションが書きたかったバツレナ小説。バッツが泣いたのは多分、もらい泣きだと言いたいような、そうでもないような…
今考えると謎の多い作品になってしまった。

珍しく?←(え?)シリアスですのでご注意を…
※7月7日少々加筆調整しました。



好きと言う言葉を口にする事はとても簡単だ。
けれども、想いが本当に真実だと言うのなら、言葉にする事すらとても難しい事で、

それを口にしてしまったらきっと――…


想いの先。

その先に、何があると言うのだろう。

別に互いの想いを、確かめ合いたいわけではない。
同じ想いを抱きたいと、望んでいるわけでもない。

ただ、側に居たい。側に居て守りたい。

儚く、脆く、壊れてしまいそうな君を、側に居て守りたい。

もう二度と、君が俺の側を離れないよう。


この胸に想いを刻んで…



想い重なる時



これは、偶然…なのだろうか?

月明かりの夜道を、逃げるように走り去る彼女を見つけたのも、

あの時見た、悲しい表情も…


「(偶然…なのか?)」

ふと、バッツの頭にそんな言葉が霞めるように過った。
今となっては、何故こうなったのか分からない。

ただ“必死だった”事は分かる。
何に必死だったのか、如何して必死だったのか・・・・・・


ああ、そうだ。

後を、

彼女の後を追ったのだ。
宿の窓から偶然見てしまった。彼女の姿。

逃げるように走り去ろうとする彼女の後を―――…


気が付いたら何も考えず。弾かれた弾丸のように後を追って居た。
仲間の事も、後の事も、正直。考える余裕がなかった。考えて居なかった。

ただ、一つだけ分かっていた事と言えば、“彼女を一人にしてはいけない”と言う。単純な事だけだった。


追って、

追って、

ひたすら彼女の後を追って…


そうして行き着いたのが、何処とも知れぬ場所。
辺りを見渡しても、誰もない。何もないこの場所。

息を切らし、素早く周りを見渡せば、すぐに彼女の姿を見つける事が出来た。
月明かりに照らされた少女は、大きな木にもたれ掛るかのように蹲っている。


「レナ?」

側に寄り。恐る恐る声を掛けるが、反応が無い。顔を上げようともしない彼女に、何処からか湧き上がる違和感。

無理やりに顔を上げさせれば、何故追ってきたのか?と言う疑問の表情を自身に向けた。
苦渋に満ちたような、哀しみにも似たその表情に、胸の奥がずきりと痛むのを確かに感じた。


静寂と闇だけが、辺りを包み込む。


静かな夜だ。

とても静かな…


まるで別世界。
此処だけ世界が違う、閉ざされた空間。


「レナ・・・」

両肩を揺らし瞳を見つめるが、その瞳はどこか虚ろで、光を差してはいなかった。
揺れる翡翠の瞳は、真っ直ぐに俺を見る事は無く力なく閉じられた。


「ごめんなさい。ちょっと、色々考えたくて…。もう、だいじょうぶだから…」

ようやく出た彼女の言葉は小さくか細く、今にも消え入りそうな声だった。
何度も「ごめんなさい」と呟く彼女の言葉。その言葉に、気持ちは宿っているのだろうか…


ああ、そうか…。
あれだけの事があったのだ。彼女の心が壊れてしまう事に何ら疑う余地などない。


最愛の父の死

友の死

無に呑まれたタイクーンの故郷

飛竜の死


沢山の死――別れがあった。
悲しみに暮れる暇など、ない位に…

それでも彼女は「もう、大丈夫だから」と、気性に振る舞っていた。
タイクーンが無に消え、彼女を助けたあの時も「大丈夫」と、そう言っていた。だが、そんな彼女の表情は、何処かとても悲しそうで…


本当は、「置いて行かないで」と、言いたかったのだとしたら?
彼女の「大丈夫」と言う言葉に安心していたとしたら…


「(とんでもないお門違いだな…)」


バッツは唇を噛締め、爪が食い込むくらいきつく掌を握りしめた。


如何して―――、

如何して何も、気づいてあげられなかったのだろう。気づこうとしなかったのだろう。
彼女の心の奥に秘められた思いに……



「本当に、大丈夫…なのか?」

今度はしっかりと、彼女の目を見る。
逸らされぬよう、両肩を大きな手で包んで。


「私は、大丈夫…よ」

そう彼女は口にしてはいるが、顔色も良くない。
いくら平気そうに振る舞っていても、心の奥底まで偽る事など出来ない。


「無理するなよ」

「無理してない」

「無理している!」

「無理なんかしていないわ!」

「している!」


いつの間にか、互いにむきになって怒鳴りあっていた。
どんな時でも笑顔が絶えない彼女が、感情をむき出しにする事は珍しい事だ。無論、それは自分にも言える事で…
他人に対し怒りと言う思いを感情任せに露わにした事など、もしかしたら初めての事かもしれない。
我に返ったのは、彼女の頬に伝う涙を見た時。


「あ、―――…」

そう言って、彼女は涙を一粒落とした。
溢れる涙は、止めどなく頬を伝っている。
声を出す事もなく、嗚咽を漏らす事もなく。自然に頬に伝う雫は、ポトリ。ポトリ。と、地面に落ちていった。

「ごめん」

バッツが小さく呟いて、決まり悪そうに視線を下に向ける。

ずっと、押さえていたのだろう。泣きたかったのだろう。
彼女が泣いてしまう…それは、分かっているつもりだった。それでも、実際に涙を流している姿を見てしまうと、如何しても苦しくなる。


壊れる寸前の心。

だからこそ話してほしかった。自分には言ってもらいたかった。
全てとは言わない。けれども、その弱さも、哀しみも全て…心の内を話してもらいたかった。
仲間だから…否。大切な人だからこそ、それは尚更で…


「レナ・・・ごめん」

俯いて涙を見せまいとしている彼女の頭を、バッツは優しく撫でた。
そっと胸に抱き寄せて、寄り添うかのように抱きしめた。
一瞬だけ、ピクリと肩が反応するが、堪えるように身体を震わせている彼女に拒絶は見えない。


強い心を持っている。だが、脆い…。
ずっと我慢して、堪えて、ただひたすら前に進んで…

どれだけの苦しみを彼女は抱えていたのだろう。


「ごめん。ごめん……な」

ふるふると何度も頭を振る彼女は、必死で何かを言おうと口を開いている。
涙は溢れ。言葉を紡ごうにも、声にはならない。潤んだ瞳を一杯に、レナはバッツを真っ直ぐに見つめた。

「如何して、バッツが謝るの?」

「貴方は何も悪くないよ?」と、そう小さく呟いて、彼女は蒼い瞳を見つめた。
空を映したかのような瞳は、困ったかのように首を傾げて、微笑んだ。

「大切なのに、苦しませて、悲しませて…何も、何一つ出来ない」


苦しそうに訴える言葉に、少女の瞳は大きく見開かれた。
ゆっくりと瞬きを繰り返し、やがて、こくり。と、小さく息を呑んだ。

「好き…なんだ。レナが・・・」

だから、悲しませたくない。守りたい。そう思って居るのに、何も出来ない。何一つ出来ない。不安すら拭い去れない。

そんな自分がもどかしくて、憎らしくて…だから…ごめん……

言うつもりなかったのに…な。

と、薄く笑っている頬に朱が混じる。視線を少しだけレナに向けると、翡翠の双方が真っ直ぐにバッツヘと向けられている。

今度は青年が、こくりと喉を鳴らした。
逸らされない視線。互いに何を言う事もない。ただ、静寂だけが過ぎる中の時間。


この想いを言うつもりなど、本当になかった。

ただ側に居て、守れるだけで…それだけで、良かった。

だが、きっともう…



「すき・・・・だよ」

「うん」

「好きなんだ。レナが…」

「うん」

確かめるように何度も名前を呼んで、想いを告げる。

「私も、私もバッツが…す・・き…」

そう、レナが言い終わるか終らないかの刹那。ぎゅっと華奢な身体を抱きしめる。
何かが弾けたかのように、想いも弾けた。

確かめるように…
ここに在る彼女の存在を確かめるかのように、きつく抱きしめた。


ああ、ここに居るのだ。

彼女はここに…


何もかも無に消えてしまった。

故郷も、大切な友も…

だからこそ、彼女がここに在る事が何よりも、何よりも…


「バッツ、泣いているの?」

「へ?」

言われた言葉に弾かれたかのように、レナの言葉に反応する。と、自身の瞳からも雫が伝っているのに、バッツは今、初めて気が付いた。

「バッツって案外、泣き虫…だね」

レナは俺の頬に手を添えて涙をすくう。

「レナだって、泣き虫だろ」

そう言いながら、俺もレナから溢れている涙をすくう。


互いの泣き顔を見て、互いの濡れた瞳を見て、如何してか、笑えてきた。

泣きながら、笑うと言う一見。矛盾しているような互いの行動。
それでも。現にそうなって居るのだから仕方がない。
今。この想いは、苦しくもあり。悲しくもあり。そして、嬉しくもあるのだ。

「バッツの顔。涙で、ぐしょぐしょね…」

ふふっ。と、彼女が笑う。それは嘘偽りのない彼女のあの表情。
優しく、安心する…大好きな顔だ。

「レナだって、同じだろう」

そう言って、俺も笑う。
互いに両手を頬に添え、瞳から流れる涙を受け止める。

伝わる体温が、暖かくて心地よくて……


触れた唇が重なるように、想いも重なる。



想いの先。その先にあるもの、それはきっと―――…


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口癖は「オナカスイタ…」です。
いつもの事なんです。

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