ventus&aquaシリーズ第四弾
ここで警告をさせて頂くのは申し訳ないのですが、注意書きです。そう言う表現は極力ないのですが、一応年齢制限にさせて頂きます(結構際どいので)
バッツの性格が違います。(あらゆる意味で)真っ直ぐで、正義感の強い彼ではないです。
そして今回はレナが少し病んでます。
因みに「罪人(つみびと)は許される事なかれ」と今回のお話がリンクしています(性格は全く別人ですが(笑)
知らない方はこちらから読んでください。(※注意書きあり)
罪人(つみびと)は許される事なかれ
月明かりすらない真っ暗な闇の中に、男女が居た。
何も見えない闇の中で感じるのは、互いの体温と息遣いだけ…
背中に感じるのは、男の熱―――腕の中に感じるのは、女の熱。
「闇しか…ないね…」
そう呟いた女は、熱がこもった息を吐いた。
ventus&aqua~Night without the moon~―――闇しかない。
空(くう)に手を伸ばしても、近くにある掌すら見えない。まさに一寸先の闇―――このまま黒に、呑まれて溶けてしまいそうだ。
―――ああ、闇しかない…
こんなにも暗く、闇に染まっている。何もかもが、黒に染まっている。あまりに深い漆黒に、自信の心すら染まってしまいそうだ。
だがこの闇に、何処か心地よさすら感じる。呑まれても良いと思う程に…
「ふふっ。闇に堕ちていくみたい…」
可笑しくもないのに、レナは微笑を浮かべてしまう。闇に居て、感覚が麻痺してしまったのだろうか?それとも、元々持っていた自負の思いなのだろうか…
―――このまま。ずっとこうして闇に身を任せたら、世界はどうなってしまうのだろう。
考えてもみなかった感情が、ふつふつと芽生える。こんな事を考えてしまうなんて、本当に如何かしてしまったのだろうか?
目の前は何も見えないが、背中に感じる温かさだけは、確かに感じる事が出来る。
全てが闇に呑まれないのは、それがたった一つの光だから…
何度も頬を滑る大きな手が、不意に肩に止まる。
項に掛かる息に思わず身を捩るが、背後からの拘束がさらに強くなり、耳朶を甘く噛まれる。
「一緒に堕ちようか…」
耳元で囁かれた甘美な誘惑と言う言葉。
それに答えてしまったら、きっと後戻りはできない。
それでも―――…
「・・・・・それも、良いかもね」
私が薄く笑うと、彼は意外とばかりに瞳を丸くする。
くるりとバッツの方へ視線を向けると、レナは薄く笑った。
貴方は、私が綺麗なおひめさまだと思っていた?
何の穢れもない純粋で、真っ白なおひめさまだと思っていた?
でもね。それは違うの。大きな間違いよ。
私は誰よりも醜くて、汚れている。
今、こうして息をしている事すら、罪深い人間なの…
淡々とした口調で、何処か諦めたような虚ろな瞳―――。
しかし、奥底に底知れぬ何かを宿しているのは確かだ。
くすりと、面白そうに男が笑うと、レナはそれを怪訝そうに見つめた。
「じゃぁ、俺も同じ…だな」
薄く瞳を開き、つくつくと笑う彼の笑顔は、氷の様に冷たい。
翡翠の瞳に映る“あお”は、どんな蒼よりも黒に近い濃い色に見えた。
それは男の目。貪欲で、何よりも深く、深く―――…
「そう…なの?」
「ん・・・・・」
レナが答えを求める前に、男が瞳を閉じ女の唇を塞ぐ。息も出来ない程に求められる口付けに、眩暈すら覚える。
息が苦しくて、呼吸が出来ない。まるで、水から陸に打ち上げられた呼吸困難な魚のようだ。
重なる身体
ただ、互いだけを求めて―――…
彼の温かく広い腕の中――心地よい体温。
瞳を閉じる。真っ暗で何も見えない。何もかもが闇に包まれているようだ。
互いの息遣いしか聞こえない。温もりと感覚だけを感じて、闇に紛れて秘め事を行う二人。
心地よい闇。このままずっと身を委ねたい。
貴方と二人だけの世界で生きていくのも、良いな……
元の世界(現実)に戻っても、いつか離れてしまう。別々の道を歩かなければいけない。
残される心の痛みを背負って生きていくのなら、一層。このまま―――…
ずっと、ずっと……奥底
深い、深い暗闇に……
このまま。ずっと、ずっと…
零れ落ちる涙を、優しく静かに大きな手が拭い去った。
月の無い新月の夜。二人の姿が、闇に染まる。
このまま、堕ちてみる―――?
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