刹那の瞬間。視界の先にうつった色は、美しく煌く桜色―――。
一瞬。全ての時が止まったかのような感覚。周りの音も、人々の動きも、まるでスローモーションのようにゆっくり過ぎていく。
風が頬を撫でた瞬間、懐かしい香りがした。
「なっ、―――!?」
ようやく出た言葉に我に返った俺は、弾かれたかのように身体が動いた。
息をする事さえも忘れ腕を伸ばす。
伸ばされた腕はすらりと長く細い手首を捕えた。
掴まれた腕に驚いたかのように振り返る少女の顔。大きく見開かれた翡翠に、如何してか一瞬悲壮を感じた。
息をのんで少女を見上げる。一音一音噛みしめるかのように言葉をつなぐ。
「レナ―――、如何して…」
如何して、ここに居る?
何故、タイクーンに帰ってこなかった?
みんな心配して…
ああ、言いたい事はそんな言葉じゃないのに…
そんな言葉しか出てこない。出せない。我ながら情けないと思いつつも、彼女の言葉を待った。
長いまつげを瞬かせ、不思議そうにこちらを見つめている少女の唇がゆっくりと動く…
「貴方は…誰?」

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